~戯語感覚~

文学、思想、そしてあるいはその他諸々

韓国映画『オアシス』イ・チャンドン監督を再び観た

 

何年振りか、いや何十年振りに映画『オアシス』を見直しました。

公開後一年後くらいに一度観てそれ以来だから、ストーリーなどほとんど覚えていない。

印象に残ったシーンがただ断片的に記憶にあるだけだったが、それがかえってよかったのか、新鮮な気持ちで再見できました。

主人公のコンジュ(ムンソリ)とジョンドゥ(ソルギョング)がどんな関係で、どうやって知り合い、最後はどうなったのか?など全然覚えてなくって、「へえーそうだったんや」と思わされることだらけでした。

コンジュとジョンドゥは被害者の娘と加害者という関係。コンジュの父親をジョンドウは轢き殺してしまう(本当は違うのだが)。出所後被害者の家に謝罪しに行った時二人は初めて出会う。

コンジュは重度の脳性麻痺。ジョンドゥは前科三犯、落ち着きが無く今風に表現すれば境界知能の大人かもしれない。故に、二人は共に家族から疎まれる存在者だった。

ジョンドゥは義理の姉に「あなたのことは大嫌い、あなたがいないと家族は平和」と面と向かってディスられる。

一方のコンジュは、兄夫婦が障碍者住宅に入居するための《ダシ》に使われる。調査員が来る時だけキレイなマンションに連れてこられるが、普段はボロアパートに一人で住んでいる。

コンジュは父の死後、兄夫婦と暮らしていたが今は別居、アパート隣人が世話を時々している。その謝礼も馬鹿にならないと兄に言われたりする。

ジョンドゥは自動車でコンジュの清掃員をしていた父を過って轢き殺してしまうが、実はそれは自動車工場を経営している兄の身代わりで警察に出頭したのだと後で判明する。

 

世の中から、そして家族からさえも疎外された二つの魂が引合うのも必然と云うべきなのか、二人は恋人のような関係になって行く。

恋人ならば当然そうなるだろう関係をコンジュが望んで結ばれる時、またしても二人は世の中・家族によって引き裂かれてしまう。

強姦事件と勘違いしたコンジュの兄夫婦は、ジョンドゥを警察へ通報し彼は逮捕されてしまう。

ここでもコンジュは自分の気持ちを周りの人々に伝えられずに一人蚊帳の外に置き去られ、単なる弱い被害者へと貶められる。コンジュの本当の思いなど顧みる者など一人もいない。脳性麻痺の人間に愛や性欲など考えられもしないとでもいうように…

それはジョンドゥに対しても同じだ。彼の気持ちや考えなど誰も一顧だにしない。

ディスコミュニケーションの遍在に取り残されたオアシスのようなボロアパートでのコンジュとジョンドゥの愛が余りにも美しくて哀し過ぎる。

 

久々に観ることになってしまったのは、この映画は気楽にふらっと観るべき映画じゃなくて、観るのに覚悟を決めてから観ないといけないからだと思う。この役を演じたムン・ソリと言う女優の葛藤もしっかりと受け止めないといけない。

 

オアシス