~戯語感覚~

文学、思想、そしてあるいはその他諸々

2016-01-01から1年間の記事一覧

来年の抱負など 

このブログはもともと『文藝戯語』というのタイトルでやり始めたのだが、その掲げた名に反して映画やら、音楽やらについて書いても、肝心の「文芸」についてはほとんど書かずにいて、流石に《羊頭狗肉感》ハンパねェーって感じになったので今の『戯語感覚』…

姜尚中『ナショナリズム』レポート➁

⑶国体ナショナリズムの生成と変容 「国体」はいかにして生まれたか?そして時間の流れの中でどのような変成作用を受けてきたかを考えるのが『ナショナリズム』のテーマである。姜は国体の始原を、本居宣長にみる。宣長は幕末に盛んになった海防論による地政…

姜尚中『ナショナリズム』レポート ①

ナショナリズムとは何か?これを定義するのは難しく骨の折れる仕事である。それは日本語訳としても、国家主義、国民主義、民族主義、国粋主義等々と訳されるし、イメージとしては上記のほか更に、外国人嫌い、排他主義、帝国主義、愛国主義、ポピュリズムな…

好きな韓国映画 (1)

前回の更新から、幾星霜・・・・・ いや、およそ一ヶ月ぶりになりますな。 今日はまったりと、力を抜いて書きたいと思います。 テーマは《韓国映画》 最初に観た韓国映画は巨匠イム・グォンテク監督の『風の丘を越えて/西便制』 この映画で〈パンソリ〉とい…

ユン・ジェギュン監督 映画『国際市場で逢いましょう』観た。~最も平凡な父の最も偉大な物語~

韓国映画『国際市場で逢いましょう』観た。 この映画は、韓国映画史上2位の観客動員を達成した作品だそうだが、そんなことは全く知らず、独立系の映画かな、などと勝手に思い込んで観てしまった。 ストーリーは、次のようなものだ(公式サイトからの引用)…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(12・結)

まとめと感想 「世界史の構造」について書き始めたのが、4月の中頃。 8月ギリギリの前回でやっと終わって約4ヶ月・・・ 最初のほうはもう忘れかけてる・・・・・ ので、ここで他のことは忘れてもこのことは忘れないでください!という論点を、備忘録とし…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(11)

世界共和国へ (ⅰ)資本と国家への対抗運動 これまでの資本との闘争には二つの欠陥があったと、柄谷は指摘する。 ① 資本を国家によって抑えようとしたが、それはむしろ国家を強化するだけであった。 ➁ 闘争の場が、生産過程に偏っていた。 ①はそのまま20世…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(10)

アソシエーショニズム 普遍宗教は共同体、部族、国家を越えた地点で初めて存立可能となる。共同体から切り離された個々人が、普遍宗教の「神の力」によって再び結びつく。しかし、例えばキリスト教は、国家の枠組みを越えた存在となったが、結局ローマ帝国の…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(9)

ネーション(国民) 国家は略取と再分配という交換様式Bに基づき、産業資本は商品交換という交換様式Cに基づいている。近代国家はネーション=ステートと形容されるが、それはネーション(国民)とステート(国家)という異質なものの結合体なのである。国…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(8)

交換様式Cが支配的な社会構成体は産業資本主義とともに初めて歴史上に現れた。これは、氏族社会、国家の出現と並んで画期的なことなのである。 産業資本 (ⅰ)産業資本と産業プロレタリア 一般に商人資本は流通から利潤を得(安く仕入れて高く売る)、産業…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(7)

近代国家 柄谷は近代国家を、国民国家から考えずに、絶対主義王権から考える。国民国家から考えると幾つかの本質的な問題が曖昧にされてしまうからだ。 (ⅰ)絶対主義王権 東ローマ帝国やイスラム帝国の周辺に位置していた西ヨーロッパでは、皇帝のような普…

小さい宇宙。 さよなら、吉良知彦・・・

zabadakの吉良さんが亡くなった。 56歳だったそうだ。 若すぎる。 今年ザバダックはちょうど30周年迎えたところだったのに。 ツイッターには亡くなったという7月3日付のツイートが残ってる。 最後のツイートは、ダッカのテロに関するものだった。 亡く…

主な国の下院構成及び極右政党

イギリス 庶民院 保守党 330/650 労働党 232/650 スコットランド国民党 56/650 イギリス独立党 1/650 (ファラージ)反EU イギリス国民党 0/650 (極右) ブリテン・ファースト 0/650 (極右) フランス 国民議会 社会党 280/577 (カルバデリス) 国民運動連…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(6)

ミニ世界システムで交換様式A(互酬)を、国家で交換様式B(略取と再分配)を、世界貨幣では交換様式C(商品交換)を見てきた。ここでは普遍宗教(交換様式D)について書く。交換様式Dは現在まで支配的になったことは無いが、その理念は現実社会に影響を与え…

「これは、おもしろい!なんて自由なんだ!!」っていう放送

最近私は、非常におもしろい放送、いや配信にはまっている。 大阪の映像制作会社が作っている番組で、「ニコ生」と「ユースト」で同時配信している。(時々、機材トラブルとかで、どちらか一方になるときもあるみたいだ。) 番組のタイトルは『おちゅーんLiv…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(5)

今回は、前回「世界貨幣」の続きです。 Ⅲ:貨幣から資本へ 商品世界の社会契約によって、一つの商品が一般的等価物として浮上してくる。それは歴史的な経緯として金や銀などの貴金属に固定され、貨幣形態を完成させる。 こうして誕生した貨幣は、商品交換に…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(4)

前回は、交換様式Bが支配的だった国家の起源及びその力の分析をやったが、今回はいよいよ交換様式Cに触れる。交換様式Cは現在の資本主義社会が基づくもので、その分析は現代社会について大いに示唆を与えるものとなる。 ① 世界貨幣 Ⅰ:貨幣と国家 第一回目に…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(3)

予定では2部、3部で一回づつ書くつもりでしたが内容が転倒に次ぐ転倒(ただ自分が何も知らないだけかもしれない)で、その「転倒」に躓かないようにゆっくり書くことにしました。 ① 国家の起源 交換様式Aが支配的な氏族社会では、互酬による強力な平等主義に…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(2)

(2)ミニ世界システム ミニ世界システムとは氏族社会のことで、この用語はチェース=ダン(Christopher Chase-Dunn)の世界システム論に由来している。ウォーラーステインは、国家形成以前の世界をシステムと見做さなかったが、チェース=ダンはそれも世界シ…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(1)

『世界史の構造』はこれまでの柄谷行人の著作の中で、私にとって一番読み易かった。若い頃、すなわち文芸評論家と称していた時分の柄谷の文章は韜晦めいて非常に分かりにくかった。その理由は柄谷が、自分の考えを直接書くのではなく、テクストに語らせよう…

よく聴くK-ROCK

日韓ワールドカップ前くらいから、韓国の音楽を聴くようになった。 おそらく最初に聴いたポップスはオムジョンファ(漢字で書くと『厳正化』!)の「リモコンとマニキュア」だったような気がする。変わった曲名なので覚えてる。当時韓国で流行ってたんだと思…

好きなギタリスト 〈アコギバージョン〉

1ヶ月ぶりです。 今日は音楽について書きます。 私は特にアコースティックギターの音が好きなのですが、 その原因を作ったのが、誰あろう、『さだまさし』です。 子供の頃、ちょうどニューミュージックが流行っており、 アリス、松山千春、さだまさし、中島…

熊井啓監督「地の群れ」を観た。~希望なき映画に希望をみる~

原作は井上光晴。映画の脚本も井上本人と熊井啓監督の共同執筆。井上光晴は三島由紀夫、安部公房とほぼ同年齢。後者二人の作品はほとんど読んでいるが、井上の作品はなぜか全く読んでいなかった。ただ昔に原一男監督の『全身小説家』を観て、作品よりも作家…

「祖谷物語ーおくのひとー」を観た

蔦哲一朗監督の『祖谷物語-おくのひと-』を観ました。 蔦監督はあの「やまびこ打線」で甲子園全国制覇をなしとげた池田高校野球部の蔦文也監督(どっちも監督!)のお孫さんだそうですが、風貌はまるっきり正反対。おじいさんの豪快な感じとは違って繊細な…

明治初期の文藝雑誌&出版社

雑誌 ・『東京新誌』 明治9年 服部撫松 ・『花月新誌』 明治10年 成島柳北 ・『団々珍聞』 明治10年 野村文夫・石井南橋・田島任天 ・『魯文珍報』 明治10年 仮名垣魯文 出版社&文藝誌 ・金港堂 明治8年 『以良都女』 『都の花』 ・十字屋 明治10年 キリス…

明治初期の新聞 

大新聞 ・横浜毎日新聞 明治3年(島田三郎・仮名垣魯文) →東京横浜毎日新聞 明治12年 (沼間守一) ・東京日日新聞 明治5年(山山亭有人・落合芳幾・岸田吟香・福地桜痴) ・郵便報知新聞 明治5年(栗本鋤雲・矢野龍渓・犬養毅・尾崎行雄・原敬) ・朝野新…

浅田彰 「新国立競技場問題をめぐって」を読んで

この浅田彰「新国立競技場問題をめぐって」は『SAPIO』に掲載された記事の元になった談話に加筆されたものであるそうだが、『SAPIO』読んでないのでどこが足されているのかはわからない。「浅田節」健在を印象づける明瞭かつ鋭利な意見であると思う。遅れて…

馬鹿小説 『真夏の夜の夢』

真夏の夜の夢 夏の宵、どこからか打ち上げ花火の炸裂する音が聞こえてくる。お祭り好きのサトルはその方角を確かめたくなって、開けてはならない網戸を思わず開けてしまった。 「あっ!」 サトルの背後で、テレビを見ていた同棲相手のサトコが叫んだが、時す…