~戯語感覚~

文学、思想、そしてあるいはその他諸々

世界史の構造

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(12・結)

まとめと感想 「世界史の構造」について書き始めたのが、4月の中頃。 8月ギリギリの前回でやっと終わって約4ヶ月・・・ 最初のほうはもう忘れかけてる・・・・・ ので、ここで他のことは忘れてもこのことは忘れないでください!という論点を、備忘録とし…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(11)

世界共和国へ (ⅰ)資本と国家への対抗運動 これまでの資本との闘争には二つの欠陥があったと、柄谷は指摘する。 ① 資本を国家によって抑えようとしたが、それはむしろ国家を強化するだけであった。 ➁ 闘争の場が、生産過程に偏っていた。 ①はそのまま20世…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(10)

アソシエーショニズム 普遍宗教は共同体、部族、国家を越えた地点で初めて存立可能となる。共同体から切り離された個々人が、普遍宗教の「神の力」によって再び結びつく。しかし、例えばキリスト教は、国家の枠組みを越えた存在となったが、結局ローマ帝国の…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(9)

ネーション(国民) 国家は略取と再分配という交換様式Bに基づき、産業資本は商品交換という交換様式Cに基づいている。近代国家はネーション=ステートと形容されるが、それはネーション(国民)とステート(国家)という異質なものの結合体なのである。国…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(8)

交換様式Cが支配的な社会構成体は産業資本主義とともに初めて歴史上に現れた。これは、氏族社会、国家の出現と並んで画期的なことなのである。 産業資本 (ⅰ)産業資本と産業プロレタリア 一般に商人資本は流通から利潤を得(安く仕入れて高く売る)、産業…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(7)

近代国家 柄谷は近代国家を、国民国家から考えずに、絶対主義王権から考える。国民国家から考えると幾つかの本質的な問題が曖昧にされてしまうからだ。 (ⅰ)絶対主義王権 東ローマ帝国やイスラム帝国の周辺に位置していた西ヨーロッパでは、皇帝のような普…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(6)

ミニ世界システムで交換様式A(互酬)を、国家で交換様式B(略取と再分配)を、世界貨幣では交換様式C(商品交換)を見てきた。ここでは普遍宗教(交換様式D)について書く。交換様式Dは現在まで支配的になったことは無いが、その理念は現実社会に影響を与え…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(5)

今回は、前回「世界貨幣」の続きです。 Ⅲ:貨幣から資本へ 商品世界の社会契約によって、一つの商品が一般的等価物として浮上してくる。それは歴史的な経緯として金や銀などの貴金属に固定され、貨幣形態を完成させる。 こうして誕生した貨幣は、商品交換に…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(4)

前回は、交換様式Bが支配的だった国家の起源及びその力の分析をやったが、今回はいよいよ交換様式Cに触れる。交換様式Cは現在の資本主義社会が基づくもので、その分析は現代社会について大いに示唆を与えるものとなる。 ① 世界貨幣 Ⅰ:貨幣と国家 第一回目に…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(3)

予定では2部、3部で一回づつ書くつもりでしたが内容が転倒に次ぐ転倒(ただ自分が何も知らないだけかもしれない)で、その「転倒」に躓かないようにゆっくり書くことにしました。 ① 国家の起源 交換様式Aが支配的な氏族社会では、互酬による強力な平等主義に…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(2)

(2)ミニ世界システム ミニ世界システムとは氏族社会のことで、この用語はチェース=ダン(Christopher Chase-Dunn)の世界システム論に由来している。ウォーラーステインは、国家形成以前の世界をシステムと見做さなかったが、チェース=ダンはそれも世界シ…

柄谷行人『世界史の構造』を読んだ ー(1)

『世界史の構造』はこれまでの柄谷行人の著作の中で、私にとって一番読み易かった。若い頃、すなわち文芸評論家と称していた時分の柄谷の文章は韜晦めいて非常に分かりにくかった。その理由は柄谷が、自分の考えを直接書くのではなく、テクストに語らせよう…