~戯語感覚~

文学、思想、そしてあるいはその他諸々

小さい宇宙。 さよなら、吉良知彦・・・

zabadakの吉良さんが亡くなった。

56歳だったそうだ。

若すぎる。

今年ザバダックはちょうど30周年迎えたところだったのに。

ツイッターには亡くなったという7月3日付のツイートが残ってる。

最後のツイートは、ダッカのテロに関するものだった。

亡くなる直前まで、世界と音楽について思いを巡らせていたんだなぁ…

 

 

ザバダックを知ったのは何時だったか?

改めて思い返してみる。

はっきりと憶えてるわけではないが、

高校生の頃読んでいた『player』という音楽雑誌(現在も発行されている)に、

ミュージシャン自身が音楽について講義したり日記やらを連載するページがあって(他にはホッピー神山さんとか人間椅子の和嶋さんとかが書いてたな)、

その連載の一人が上野洋子さんだった。

内容は今で言うDTM入門みたいなことを書いていた。

当時、上野さんはザバダックのメンバーで、当然ザバダックの活動のことも書かれていた。そこでザバダックの名を初めて知ったのだと思う。

 

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 初めて買ったCDは『桜』(↑この曲が入っている)。

アルバム『桜』は、吉良+上野二人体制のザバダック最後のオリジナルアルバム。

二人の集大成的な作品で、二つの強い個性が高度なレベルで融合した傑作だと思います。当時、流行していた邦楽(CMとのタイアップ曲が多かった)とは全く違ってます。

ケルト音楽っぽいのやら、日本の民謡「椎葉の春節」のザバダックバージョンが収録されてたりします。すっかりやられてしまった私は、過去に遡るかたちで彼らの旧譜を聴くようになります。

 

 一番聴いたのがアルバム『遠い音楽』

これはザバダックの最高傑作ではないかと個人的には思っています。

タイトル曲で、彼らの代名詞にもなってる「遠い音楽」。

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他にも「愛は静かな場所へ降りてくる」や「Harvest rain(豊穣の雨)」などの素晴らしい曲が満載です。

でも、私が最も好きなのは「sarah」。透明感があって、儚く浮遊的で、聴いてるだけで意識が飛びそうになります。

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それから『飛空夢』の「GOOD BYE EARTH」

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この曲は歌詞にインパクトあります。日本語で歌うと胡散臭く感じられるであろう内容を英語でサラッと歌っているのがニクイです。

ちなみに歌詞は、

Still I do remember
How many trees they've cutting down
Surely I am aware of now
How many speies rooted out

 

Development...cultivation...improvement
We believe it
Irrigation and dredging...reclamation
We believe it

It seems like an achievement

It's nothing but defilement

for mother earth

 

Seals had been liveing in northern sea
Thrown on the shores with muddy oil

Whale rounding in the ocean
Stored up many poisons in the their fresh

Mathematics and physics....chemistry
We believe it

Architecture...engineering...agriculture
We believe it

It seems like an achievement
It's nothing but defilement...

 

Well I have one question for you
Why do they think they're so clever
Turely it is so strange to me
WHY is MAN the lord of creation

 

Streams...and reivers...the ocean

We destroyed it

Many woods....and forest....the jungle
We destroyed it


If we can't stop it
Maybe we must say good-bye to mother earth

 

irrigation(灌漑)とか、dredging(浚渫)、reclamation(干拓)などの単語はこの曲で憶えました。

 

〈のれん分け〉後、吉良さんワンマンのザバダック時代になります。

同時にレコード会社もメジャーからインディーズに移籍します。

以降のザバダックはメジャー所属とインディーズを行ったり来てりしますが、個人的には、自分の好きなことができるインディーズ時の作品の方が優れていると感じます(恐らく皆さんそうではないでしょうか?)。

 solo一発目の『音』から、

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『colours』から「僕のビー玉」

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あと吉良知彦の個人名義でリリースされた、『賢治の幻燈』

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この曲は宮沢賢治の詩に吉良が曲を付けて、奥さんの小峰公子さんが歌ってます。

 

22枚目のアルバム『平行世界』くらいまでは聴いてましたが、ここ最近は正直聴いてなかったです、だから30年の歴史の3分の2くらいはリアルタイムで聴いていたことになるでしょうか。

 

私にとって「ザバダック」は、やはり上野洋子とのコンビのものという感じが強いです。吉良さん、上野さん単独でその後も活躍されていますが、その個性がぶつかり、プログレッシブロックと民俗音楽的要素が融合して生み出された音楽には、他の時期とは違う緊張感があると思います。

 

バブル時代、聴きたい邦楽がほとんど無かったあの時代。

ザバダックがいてくれて本当によかった。

人は死んでも、音楽は残る。

その残された音楽を、これからも聴いていくでしょう。 

さよなら吉良知彦

私の小さい宇宙。

 

                 ー〈合掌〉ー